【大地讃頌】「三浦半島のヒミツ」が見られる地層3選&謎すぎる猿島の生い立ち【活断層も見学?】(後編)

三浦半島のモトは南の海からやって来た〟という驚きの事実が分かった前編(下記からどうぞ!)。
 後編の今回は、横須賀市自然・人文博物館学芸員の柴田健一郎さんに、「三浦半島でぜひ見ておきたい地層」を紹介していただきました!
 さらに、気になるのは東京湾に浮かぶ唯一の自然島「猿島(さるしま)」。
 この島がどうやってできたのか? も聞いてみました!



柴田さんおススメ! 三浦半島で必見の地層3選

三浦半島の地層を知り尽くしている柴田さんに【ぜひ見ておきたい!三浦半島のおもしろい地層ベスト3】を聞いてみました!

【第1位】荒崎(横須賀市荒崎公園内)

 ここは白と黒の縞模様がよく見えます。白は泥岩、黒は火山の噴出物で「スコリア」と呼ばれています。地層が傾いているので地層の観察におススメですね。よく見ると断層があって、大地の変化がよくわかるのも特徴ですね。
 ちなみに地層の厚さを測れば地層ができた時間がわかると思われがちですが、木の年輪と違って地層の年代は特定が難しいです。ただ、火山灰が挟まれていれば地層が降り積もった時期が分かる場合があります。火山灰層であるSoは中のウランと鉛を分析して約470万年前と推定されました。
 これが決め手になって、荒崎全体の地層が約470万年前の海底でできたとわかります。

写真:柴田健一郎氏 / 編集部で一部改変

【第2位】三浦枕状(まくらじょう)溶岩(横須賀市平作)

 三浦半島最古の岩石です。現在は護岸の上から覗くような形になっています。遠目に見る感じになっていますが、横須賀市の天然記念物として大切に保存されているものです。

三浦枕状溶岩(横須賀市平作)

★三浦枕状溶岩については、後日レポートをアップします!(編集部)

【第3位】野比海岸・北武(きたたけ)断層(横須賀市野比)

 三浦半島に5本あると言われている活断層の1つで、断層の一部が野比海岸に露出している場所です。
北武断層は約2500~1000年に1回動いて地震を起こすと考えられていますが、ずれた部分の岩石はもろくなり、粘土になっています。春の大潮の時期に観察に行くとよいでしょう。粘土の中には蛇紋(じゃもん)岩や玄武(げんぶ)岩、石灰岩など三浦半島ではめずらしい岩石が見つかるかもしれません。
 活断層が陸上で露出している場所はとても貴重で、粘土の両側にある地層の縞模様も見どころです。

野比海岸・北武断層の東側に露出する三浦層群逗子層の砂岩泥岩互層
野比海岸・北武断層の断層粘土(断層ガウジ)

「猿島」はいつ、どうやってできたのか!?

ところで。

三浦半島の地質を表した図をよーく見ると、気になってしまうのが「無人島・猿島」。
何だか、この島だけ三浦半島の〝本体〟とは違う色で塗られているのですが・・・。

出典の論文から一部抜粋(出典はページの最後)/ 編集部で一部改変

「地層としては、(図で)同じ色で塗られている横須賀市北部や横浜市南部のものと同じだろうと言われています。しかし、なぜここだけ島になったのかは分かりません。猿島周辺だけ地層が固く固結していて、削られずに残ったのかもしれません」


猿島の〝超古代〟を見つけてみよう!

 ということは、猿島に何らかの痕跡があるということ!?

「猿島をつくる岩石は『凝灰質砂岩(ぎょうかいしつさがん)』で、火山灰が多く含まれます。特徴としては、茶色っぽくてぼろぼろと崩れる岩が多いですね」

 確かに! 島内を歩いていると、茶色くてもろい岩が剥き出しになっているのをよく見ます。

「その中に、大きくて白っぽい泥岩の塊がいくつか入っている、というのも特徴です」

これは南の海で溶岩が固まった三浦枕状溶岩と全然違いますね。

 では猿島の地層はどれぐらい前にできたのでしょうか。

「顕微鏡でしか見ることのできないサイズの放散虫や石灰質ナノプランクトンなどの〝微化石(びかせき)〟が出てくれば、地層ができた年代の特定につながるのですが、猿島では全然出てこないのです。横須賀市北部や横浜市南部の地層と同じ地層だとすれば、できたのはおよそ250万〜300万年前だと考えられます」

 猿島で微化石を見つけたら、長年の謎が解明されるかもしれません!
 では、この島はいったい何年前に島になったのでしょうか?

「猿島には関東ローム層(富士山や箱根の噴火で積もった層)があるのですが、それからすれば約10万~8万年前には海底から陸地になったと推測されますが、詳しいことはわかっていません」

 およそ8000年前にヒトが住んでいたという痕跡はありますが、それより前はどうなっていたのか、猿島の生い立ちには不明な点が多くあります。
 ますますフシギなこの島・・・なんだかワクワクしますね!


【素朴なギモン】そもそも地層って、なんであんなカタチになっているの?

 私たちの足元の大地は、いろいろな土砂が〝堆積〟してできている、というのは分かりましたが、そもそも地層はどうやって積もるのでしょうか

「たとえばこの写真(おススメ地層第1位「荒崎」)では、

黒色のスコリア凝灰岩層は火山灰が降り積もったり、海底で崩壊した土砂がより深い海底に運搬されて積もったりしてできたもの。一方で白色の泥岩層は、泥が時間をかけて降り積もったものです」

 そこに加わるのが、さまざまな地震や地殻変動。

「降り積もった地層は水平な縞模様をつくります。しかし固まった地層はプレートの働きによって力を受けて断層ができたり、押しげられて斜めになったりします。また、数百年に一度の大地震が起これば、数メートル土地が隆起することもあります。こうして地層は変形し、長い時間をかけて海底から陸上へ持ち上げられます。ーーこうしたイベントが数えきれないくらい繰り返されているんです

 なるほど、水平な地層と傾いた地層はこうしてできていくのですね。三浦半島にはフシギな地層がたくさん。実際に歩いて、大地の歴史を感じてみませんか?


<Special Thanks>
 柴田健一郎(しばた・けんいちろう)さん
横須賀市自然・人文博物館 学芸員(地球科学) 博士(理学)
1979年、茨城県生まれ。専門は堆積地質学。少年時代に恐竜に夢中になったことがきっかけで、地質学への興味を持ったという。2006年から現職。

〝大昔の地球がわかり、未来の地球も予想できる〟ことが地球科学の一番面白いところ」と語る柴田さん。
 今後、新たな謎がどんどん解き明かされていくことが予想される三浦半島。その地質学をリードする研究者として、大地の〝謎〟に今日も挑んでいます。

<図表出典>柴田健一郎・野崎 篤・高橋直樹・笠間友博・西澤文勝・田口公則 2021. 三浦半島の新第三系と第四系:付加体ー外縁隆起帯ー前弧海盆堆積物. 神奈川県立博物館調査研究報告自然科学, 第16号, 69-106.

<取材協力>横須賀市自然・人文博物館

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