逗子&鎌倉の国指定史跡「名越切通」を巡る 〜12月初旬、まんだら堂やぐら群のイチョウ映え

■名越切通だけじゃない!知る人ぞ知る遺構とは?
逗子と鎌倉にまたがる国指定史跡「名越切通(なごえきりどおし)」といえば、ここを思い浮かべる人が多いかな。


逗子と鎌倉の境、名越トンネルの上にあります。鎌倉から衣笠を通り、東京湾に抜ける浦賀道(古道)の一部だったといわれます。歴史書『吾妻鏡』の鎌倉時代中期、1233年8月の条に「名越坂」の記述があるそうです。落ち葉を踏みしめて歩く時、時代がリープした気分に。
で、
やっぱり「名越切通」というと「鎌倉」のイメージですが、「逗子」の貴重な史跡「まんだら堂やぐら群」も昭和41年、一緒に指定されているのです。
「まんだら」とは「古書林」によると、サンスクリット語の「マンダラ(maṇḍala)」が語源で、「神聖な空間」などの意があり、深い宗教的意味を持つ図像体系のこと、日本では平安時代に密教とともに取り入れられ、特に空海(弘法大師)によって体系化されたと説明があります。
そういえば、
「逗子」の地名の由来と言われる延命寺(逗子市逗子3)は平安時代、弘法大師が「下野の国二荒山登山のみぎり 当山に立寄り 延命地蔵菩薩安置する厨子を設けられ」とあります。弘法大師を信仰する人が「まんだら堂」なる建物、修行や儀式の際に使う「堂」を建てたのかもしれません…、などと想像。
遺跡調査をしていますが、どんな建物でいつまであったのかなど解明されていないそうです。が、柱の跡などは発掘されています。

「まんだら堂」の名が確認できる最も古い文献は、豊臣秀吉の時代、文禄三年(1594年)の検地帳です。そこには畠の地名として記されています。
■いざ紅葉の名所へ!
前置きが長くなりましたが・・・
紅葉の見頃を迎える「まんだら堂やぐら群」へのおススメコースをご紹介。
スタートは法性寺(逗子市久木9)です。逗子駅からレンタル自転車(自転車で10~15分)がいいかな。


寺門に白いお猿さんがいますが、ここは「おさるばたけ」と呼ばれ、災難除けの守護として親しまれています。

門を入りすぐ、急坂が続きます。
余談ですが、年に一度、この150メートルの急坂を駆けあがるイベントがあります。東日本大震災からの復興と津波の教訓を伝えるもので、スタートの合図は「逃げろ!」です。


急坂の途中から逗子市内を眺めてみます。このあたりで半分?

↑ここで150メートル。左、本堂、右、休憩所。
ここからまだ先に上ります。階段100段位あがりますと、山頂!です。
「山王大権現」という山の神さまが護り神としてお祀りされています。

このさらに上へ~!!

すると・・・逗子の市内~海岸を360度、一望!でございます!


で、
ここは寄り道でした。
目指すは、「まんだら堂やぐら群」、いざ。
ここを降りまして、右手に歩きます。
墓地横の細い道を抜けますと、(見逃しそうな)道標が山側にあります。


ここからは山道です。ずんずん行きます。
すれ違う人と「こんにちは」とあいさつを交わします。いつか覚えたハイキングの心得。

山道は整備されていて、分かれ道には道標があります。
枯葉がふかふか気持ちいい道を10分ほど。


■ついに到達!フシギな遺構「まんだら堂」
いよいよ「まんだら堂やぐら群」の案内にたどり着きました。
保存のため、春秋の期間限定公開ですから、出入り口はしっかり管理されています。
入り口を入って右手を上がると全景を見渡せる広場があります。そこから観ると・・・。

鎌倉時代から室町時代に鎌倉やその周辺の崖地に造られた、横穴式の墳墓または供養の場を「やぐら」と呼んでいます。ここには約2メートル四方の「やぐら」が150穴以上確認されています。これだけまとまった数のやぐらが残っている場所は鎌倉周辺でも珍しく、最大規模のやぐら群の一つと言われます。
手前の平場の説明もあります。調査発掘の結果が記されています。
火葬したことが分かる跡もあるようです。

展望台から見える群の奥にも貴重な遺構があります。

やぐらの中に並ぶ五重塔の説明。

敷地内には逗子市の職員さんがいて質問に答えてくれたり、道案内をしてくれたりします。
↓配布していました。

その職員さんによると、今年のイチョウは台風の影響がなく、葉がたくさん残っているので12月に入り、綺麗な紅葉が期待できるかも、と。
もうひとつ、余談ですが、「友引」に行くと、静かなことが多いそうです。
「まんだら堂やぐら群」に近づくと、史跡の下方にある施設の大きな音が聞こえるんです。

冒頭の「切通」はここから本当にすぐ!です。
鎌倉時代に思いを馳せて、古道を踏みしめてください。



説明を読んで、なるほど・・・。
■見られるチャンスはあとわずか
ここから、鎌倉方面に歩くコースもありますが、今回は法性寺に戻ります。
戻る途中に、もう1か所、ご覧いただきたい「大切岸(おきりぎし)」があります。
石切り場の跡になります。

この案内看板のすぐ先です。

長さ800メートル以上にわたって高さ3~10メートルの断崖が尾根に沿って連続する遺構です。
鎌倉では14~15世紀頃の建物の基礎などに切石を大量に使っているので、ここはその頃の石材生産地だったのでは、とのことです。ここからあの切通を通って運んだのかと考えるとすごい重労働です。
鎌倉時代の歴史と当時の人々のいとなみをたどる逗子の史跡。
「まんだら堂やぐら群」の公開日と公開時間にくれぐれもご注意いただいて巡ってみてください。
*12月14日までの土日月曜と祝日。午前10時~午後3時(入場は閉門5分前まで)*
この記事を書いた人
Makoto
Writer Makoto
放送作家出身。現在は地域メディア編集長兼ライター。町も人も歴史を大切に、自分史活用推進協議会認定アドバイザーとして自分史作成も手がける。夢の1つはドラムを習うこと。